メールマガジン“ローマから吹く風”第16号:
ベルベデーレのトルソ/カエサルの逸話 “借金王・カエサル"
1.はじめに 夏だ!トマトご飯
詳しいレシピはクチーナ・イタリアーナ(イタリアの台所)でご覧下さい。
2.ベルベデーレのトルソ
ルネッサンスが花開いた頃の芸術家達が古代ローマの作品を見ていかに興奮したかを考えると美術大学出身のヤマネさんも興奮を共有するのだそうです。このトルソはそのシンボル的作品だからです。
このムキムキな男性像は、法王ユリウス二世(1503〜1513)のご時世にローマのカンポ・デ・フィオーリ付近で発見された紀元前1世紀の大理石彫刻。他の多くのローマ時代の大理石彫刻と同じようにギリシャ彫刻(ブロンズ)のコピーらしい。
ヘラクレスをかたどったものと言われている。現在見られるように四肢と頭が欠けた状態で発見されてからバチカン内のベルベデーレの中庭に置かれ、そこから「ベルベデーレのトルソ」と呼ばれています。力強い筋肉の動き、ダイナミックなポジション。古代から現代を通して彫刻の傑作と言ってよいと思います。
これが発見された頃はルネッサンスの盛り。著名なミケランジェロやラファエロが活躍していた頃です。ミケランジェロはこの彫刻に惚れ込んで、ユリウス二世が欠けた部分を修復するようにミケランジェロに依頼したけど、ミケランジェロは「いや、このままが美しい!」と言って依頼を断りました。
ミケランジェロは「彫刻の傑作とは、完成した作品を崖から転がし、あちこち欠けて、それでも美しいものが傑作だ」という言葉を残しているそうだけど、この彫刻を頭に浮かべて言ったものだと思います。なぜルネッサンス期の芸術家たちが古代ローマ美術に興奮したかというと、ルネッサンス様式が始まる前の美術様式のせいです。
ビザンチン様式は、古代ローマ帝国がものすごく大きくなって、首都をローマからトルコのコンスタンチノープル、今のイスタンブールに移動したことから始まる。ビザンチン様式は千年ほど続く中世時代の美術様式です。
千年もの間、平面的で人間性を欠いたビザンチン美術を見慣れた目に、当時は地方であったローマだったからこそ残っていた数々の遺跡にあったリアルな彫刻群やフレスコ画を見た芸術家の感動を想像すると、そのことが感動を呼びます。人間回帰の機運が高まるわけですが、ただし、表向きは神の権威は絶対ですから、興味の中心を人間に移した偉大な芸術家達は自分たちの作品の中に人間への興味、そこから来た探求、探求の結果の科学的知識を隠しました。その原点を「ベルベデーレのトルソ」に見ることが出来ます。
ベルベデーレのトルソは→http://www.ivc-net.co.jp/guide/rome/torso.html
3. カエサルの逸話 “借金王・カエサル”
その為の活動資金は不可欠です。実家のユリア家の資産に期待できなかったカエサルは、借金することにより、自分の活動資金を調達し、地位を向上させました。その額は巨額で、借金で身動きが取れなくなったカエサルが、ローマ随一の金持ちのクラッススに債務保証をしてもらい、ヒスパニアに赴任したとの逸話も残っています。この借金は、公共施設の建設・整備や自己投資、選挙活動等に使われたということです。成り上がって豪邸を建てるといったようなことと、カエサルは無縁だったようです。
借金について見方を変えると、お金に無頓着なカエサルに、あえて資金を貸すクラッススのような資産家がいたということです。カエサルが借金術に優れていただけでなく、それ以上に、資産家クラッススはカエサルの将来性に期待したということです。この膨大な借金は、ガリア制圧まで続きます。ガリア制圧後、ようやくカエサルは資金繰りの苦しさから逃れることができました。
ちなみにクラッススの借金は、パルティア遠征でクラッススが戦死して、チャラになったようです。カエサルには運も味方していたのだと思います。
4.旅の情報 ヴィバルディのコンサート(ヴェネチア)
サンタ・マリア・デッラ・ピエタ教会は、司祭であったヴィバルディがこの教会併設のピエタ慈善院(救貧院 兼 孤児院 兼 音楽院)で音楽を教えていた縁のある教会です。
今年の8月は5,6,7,12,13,14,15,19,20,21,26,27,28日にヴィバルディのコンサートが開催されています。ヴェネチアにご滞在の方は、音楽の国イタリアで生のコンサートを体験されては如何でしょうか。
5.あとがき
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