イタリアのレストラン


イタリア発祥の食文化運動・スローフード運動

スローフード協会とは

 イタリアでは、ローマのスペイン広場にマクドナルドが開店したことをきっかけに、イタリアの食文化を守るとの視点で、ファーストフードに対置したスローフード運動が始まったと言われています。1989年にはイタリア北部ピエモンテ州のブラ(Bra)にスローフード協会が設立され、現在ではイタリア国内で4万人、世界各国に8万人以上の会員を有する国際組織となっています。
 
 発足当初は、“伝統的な食材や料理、質のよい食品やワインを守る”“消費者に食育教育を進める”“質のよい素材を提供する小生産者を支える”といった視点で、活動が進められましたが、その後、美食とは何かという問いかけから、伝統の食事、素朴でしっかりとした食材、有機農業、健康によいものに関心が向かうようになっています。

「味の箱舟」プロジェクト

 1997年から行われている「味の箱舟」プロジェクトでは、大量生産による「食の均質化」という名の大洪水から、美味しい食品や食材を「味の箱舟」に乗せて守るというコンセプトで、未来の子供たちに残したい貴重な食材や食品を発掘する作業が進められています。
 
 この活動では、スローフード協会のメンバーたちが、各地で農畜産物、伝統漁法、加工食品などの調査を行い、現地のものづくりを取材した「箱舟」という雑誌を通じて、守るべき食材や食品の価値を一般やマスコミに伝えています。さらに味の箱舟に認定された品目のなかで、特に緊急な支援を必要とするものに対して販売方法を企画・助言し、小さな生産者や加工業者が作る伝統的な食品の市場進出を促す活動を進めています。このプロジェクトでは多様性の保護こそが飢餓問題を解決する唯一の鍵という思いが込められています。

スローフードの情報交換

 スローフード協会では、世界中の会員に送られている季刊誌「スロー」を通じて、スローフードの価値や考え方を伝える活動を進めています。また、イタリ ア風居酒屋であるエノテカから発展した庶民的な食堂である「オステリア」のガイド本の発行を行っています。「オステリア」では、地元のワインがそろっている一杯飲み屋や郷土料理を提供している素朴な食堂、地元の農業に密着したアグリツーリズモ、ワインセラー、郷土料理のレ ストランなどを紹介しています。

スローフード協会認定のレストラン

 スローフード協会では、スローフード運動の理念にあったレストランを協会認定のレストランとして推奨しています。ここでは、美味しくていろいろな味を 楽しめることを基本に、地元の食材を使っていること、それらの食材が土地の歴史や風土と結びついていること、小さな生産者によるもので限られた生産 量であること、遺伝子組み換え食品でないこと、健康に良いことなどが認定の基準となっています。
 
 このような基準があることから、認定を受けたレストラン は、郊外に立地する地元の食材を使った伝統的郷土料理を提供するレストランが多くなっています。しかし最近では、ローマのベジタブルレストランであるアラ ンチャ・ブルーのように、季節ごとに採れる地元の野菜を中心に前菜から主菜までを提供する新傾向のレストランも、協会認定レストランに認定されています。

誰でも気兼ねなく、美味しいものを楽しむ運動

 スローフード協会というと何かいかめしい主義・主張や政治団体を思い浮かべてしまいがちですが、イタリアの会員は、各地の美味しいものを探し出して味わいながらその情報を交換し合っているというのが実情のようです。言ってみればミシェランガイドに載るような高級店ではなく、誰でも気兼ねなく、経済的に楽しむことのできる地元の特色ある食材を工夫して使ったレストランや食材を紹介しあって、楽しんでいるということです。
 
 考えてみれば、伝統の食事、素朴でしっかりとした食材、有機農業、健康によいものを大切にするスローフードの理念は、マンマの味が一番と考えるイタリア人にとって、あたりまえなものであり、もともとあったイタリアの食文化に回帰すると言う意味で、自然に入っていける運動のようにも思えます。
 
 そもそもイタリア料理は素材の味を重視するものです。皆さんもイタリアを訪ねられた際には、イタリアの食文化の原点である各地のスローフードレストランやその地域ならではの食材にチャレンジされては如何でしょうか?

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