Cucina Italiana

クチーナ・イタリアーナ(イタリアの台所)
第30号

「サンマルツァーノのトマト/日本で生産するサンマルツァーノ/サンマルツァーノのトマト缶詰」

はじめに



 イタリア料理といえば、トマトソースを思い浮かべられる方も多いのではないでしょうか。実際、スパゲッティやマカロニ、ラザーニャといったパスタ、手軽な食事として楽しまれているピッツァ、肉や魚の煮込み料理やソース、和え物として幅広くトマトソースが利用されています。
 
 このトマトソースの材料として最もポピュラーなのが、南米原産のサンマルツァーノ種のトマトです。この収穫は、6月から10月上旬に行われます。イタリアではこの収穫期間にはソースに生のトマトを使います。収穫期間以外の季節は、缶詰ないし保存用に作った料理用のトマトジュースを使います。
 
 第30回は、永年にわたって改良が加えられ、イタリア料理に欠かせない食材となったサンマルツァーノのトマトの紹介をするとともに、日本で生産しているサンマルツァーノ種のトマト、それからお薦めのサンマルツァーノのトマト缶詰のお話をします。
 
協力者の紹介と刊行予定
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish.html

 

イタリアの食材
「サンマルツァーノ種のトマト」



サンマルツァーノ・トマトのジュース作り

 イタリア料理に欠かせない、トマトソースのもとになるサン・マルツァーノは、他のトマトに遅れて、夏の比較的終わりに近い頃から熟し始めます。上級の品質のおかげで、世界中に知られています。このトマトの品質は皮を剥かれた状態で、一層素晴らしいものになります。 地中海性気候、とても肥沃でかなり組織化された土壌改良、長年の経験を含む地元農民の技術といったものが、製品の世界的な成功の要因となりました。
 
 通説では、ペルー王国からのナポリとそれ王国への贈り物として、最初のトマトの種が1770年ごろイタリアに着いたということで、それは、現在のサン・マルツァーノのある地域に植えられました。このことがサン・マルツァーノトマトの起源であると信じられており、永年の改良により、現在の品質を有するようになりました。1902年においては、この有名な種としてノセラ、サン・マルツァーノとサーノといった同種のバージョンがありました。その後、パスタにトマトソースが使われるようになり、サン・マルツァーノのトマトが、20世紀への変わり目の時点で、美食の観点から大きな重要性を持つようになりました。トマトソースを作る産業がフランチェスコ・チリオによって始められたのです。サン・マルツァーノトマトは、地域の農民に経済効果を与えたことから「赤い金」とも呼ばれていました。1980年代の間に、衛生問題と経済理由(特に高くつく農業経営方法に関連した)のために、生産量が大幅に減少しました。しかし、カンパニア州と保護協議会の努力により、生産の回復が行われ、国際的な市場で取引することを可能にしました。特にカンパニア州アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノ産サンマルツァーノ・トマトは、品質の高さからD.O.P.(原産地名認定・保護制度)対象の食材に認定され、ヨーロッパとアメリカでだけでなく、世界各国で人気が拡大しており、また、地中海ダイエットの成功が拡大に拍車をかけています。
 
<アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノ産サンマルツァーノの特徴>
 アグロ・サルネーゼ・ノチェリーノ産サンマルツァーノ・トマトの特質は、その特徴的なビタースイート味、剥がすのが簡単な縦の溝を持った皮の細長い形、明るい赤の色、種が少なく、繊維質でない明るい赤の果肉等です。 生で使うか、処理するかにかかわらず、これらの特徴は、トマトを極めて優れたものにします。水抜きをされた重さ; 4%以上の残滓; 4.2と4.5間のpH。添加物には塩(正味重量の最大3%。)、バジルの葉と半濃縮したサン・マルツァーノのトマトを使ったものだけが、トマトソースとしてEUの保護食材として認められています。
 
 フレッシュな製品を作り上げるには、手間ひまがかかり、生産費への影響が避けられません。体系的に手間をかけて果樹を育てることや、何世紀もの間続く製法といったものが採用されています。残念ながら、EUで認められたレベルのサンマルツァーノのトマトは、日本では生産できていないのが現状です。

 

日本でサン・マルツァーノのトマトを栽培する農家



出来たジュースを保存用の瓶に

 長野県 東御市にあるアグロノームさんでは、日本でサン・マルツァーノのトマト作りにチャレンジしています。本場のサンマルツアーノは昨年栽培しておりましたが、栽培が非常に難しく、今年は サンマルツアーノ系のスカトローネという品種を栽培しております。両方イタリアの 種で料理用ですので 味などに違いは感じられないとのことです。東京の新富町にあるイタリアンレストランCoulis(クーリ)さんにもサン・マルツァーノのトマトを出荷しており、イタリア人の方にも食べていただき、高評価を得ているとのことです。
 
アグロノーム
 〒389-0505 長野県東御市和7819-1
 TEL 0268-55-9927
 E-mail:info@agronaume.com
 
イタリアンレストランCoulis
 〒104-0041 東京都中央区新富 2-10-10 2F
 TEL : 03-6228-3288

 

お薦めのサンマルツァーノのトマト缶詰


 日本では、おいしいイタリアンに不可欠なサンマルツァーノのトマトの入手が困難となっています。やむを得ず、サンマルツァーノのトマトの缶詰めを使うことになります。イタリア料理店では、よくSpigadoroの缶詰めを使っています。でも先日、おいしいトマト缶詰をイタリア食材店で見つけました。Spigadoroの3倍の値段はするのですが、それだけの価値があると思います。イタリア食材店Teppoで勧められた有機栽培ホールトマト缶LA TERRA E IL CIELOです。一度試されては如何でしょうか。
 
イタリア食材店Teppo
 神奈川県茅ケ崎市松ヶ丘2-8-42 1F
 Tel:0467-33-5784
 URL:http://teppomichi.exblog.jp
 
イタリア情報メルマガ"ローマから吹く風"
http://www.ivc-net.co.jp/news/mailmaga/index.html

 

次回予告


 料理研究家の長谷川恒代様から、どうせ不便なところを紹介するならローマの郊外のフラスカティを紹介したらとお話をいただきました。そこで次回はフラスカティのフラスケッタ(居酒屋)で味わう絶妙の豚の丸焼き・ポルケッタをご紹介します。
 
協力者の紹介と刊行予定
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発行


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