ローマから吹く風第51号
発展するイタリアの生協/ペテロをつないでいた鎖

 
目 次
1.はじめに
2.発展するイタリアの生協
3.ペテロをつないでいた鎖
4.旅の情報:トラステヴェレの夏の風物詩の屋台村
5.あとがき

1.はじめに

 第二次大戦後のイタリア文学を代表する作品の一つとしてカルロ・レーヴィの「キリストはエボリで止まった」があります。反ファシズム活動の罪で政治囚として南イタリア・バジリカータ州の寒村に流刑された主人公が目のあたりにした、現代文明から隔絶してキリスト以前から変わることのない、呪術や神話が生きている南イタリアの生活を描いた傑作です。
 この作品の中では、2年に一度の頻度で、聖職者と外科医を兼ねた「子豚治療人」が農村を訪れて繁殖に使わない豚の去勢を行っていることが描かれています。治療人は家族で代々受け継がれてきた特殊な技術をもっています。とくに卵巣の除去の料金は一匹2リラと結構高価なのですが、豚の肉質を高めるためには不可欠な処置と人々に認識されています。豚を死なせることなく手際よく処理してしまうので、子豚治療人が訪れると、行列ができるのだそうです。
 EUに加盟して以来、イタリアでは畜産動物の扱いについて、食肉の安全性の面から厳しい規制が課せられるようになっています。「子豚治療人」による手術のような伝統的な技法は禁止されるようなっており,食肉業界では大問題となっています。このような中で、この厳しい規制を積極的にとりいれ、消費者に受け入れられているのが生活協同組合のCOOPです。イタリアではCOOPが元気なのです。

2.発展するイタリアの生協

 イタリアで古くからある生活協同組合・COOPは、もともとは1854年にトリノで生まれた生活協同組合運動を起源としており、労働者の互助組織としてイタリア全土に広がりました。この伝統的な生活協同組合運動を背景にスーパーマーケット化したのがCOOPです。このCOOPの発展は、貧しい時代に安くて美味しいものを仲間たちで分け合うところから始まっています。現代では豊かになった時代の変遷を反映して、手軽で美味しく、新鮮な地産地消食材に重点をおくほかに、化学合成せず、GMOフリー(遺伝子組換えなし)といった安全性・品質の高い商品や小麦アレルギーを考慮した商品を集め一般の消費者に広い支持を受けています。
 イタリアで発展を続けている有力企業の特徴は、国や政治力に頼らないことを特徴としています。これは規制の有無にかかわらず、自社のポリシーとして、正しいと思った企業行動を選択する傾向が強いということです。ヨーロッパではEUが食肉等の動物起源の食材について注意を払うようになっています。このような中でイタリアではCOOPが積極的に動物起源の食材の安全性向上に取り組んでいます。
 
 すでにヨーロッパでは、食肉関係食材を畜産における食用動物保護の取組みによって生産された食材に限定するEU指令が出されており、加盟国はこれに従って国内法の改定、食用動物保護規制を行っています。イタリアのスーパーの中で最もこの取組みが進んでいるのがCOOPで、COOP各店ではこの取組みをアピールするポスターが全店で展開されています。イタリアではヨーロッパ各国同様、安い遺伝子組換え飼料を使った輸入食材の流入により、商品価格引き下げ圧力が強いのです。例えばローマ周辺のコープの食肉は周辺一般スーパーの価格と比較して20%以上高いのですが、食品の安全性、品質の高さをアピールに成功して、売り上げを伸ばしています。このコープの活動はヨーロッパ各国の小売業の中でも際立っており、訪問者が絶えません。
 
 発展するCOOPは→https://www.ivc-net.co.jp/food/culture/coop.html

3.ペテロをつないでいた鎖

 ミケランジェロのモーゼ像のあるサン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会(Basilica di San Pietro in Vincoli)は西ローマ帝国皇帝ヴァレンティアヌス3世の妻で、東ローマ帝国皇帝テオドシウス2世と皇妃エウドチア・アウグスタの娘であるエウドッシア・リチニアによって5世紀に創建されました。
 名前にヴィンコリ(鎖)とあるように、キリストの第一の使徒ペテロがつながれた鎖が祀ってあります。聖ペテロが、キリスト教の聖地エルサレムで繋がれていたという鎖と、ローマの牢獄で繋がれていたという鎖が奇跡的に1本につながったものが、主祭壇の下に展示されています。
 
 ローマの閑静なモンティ地区にある教会で、観光客も比較的少なめの教会です。初期キリスト教時代の様式が残った貴重な教会です。
<Basilica di San Pietro in Vincoli>
 Piazza di San Pietro in Vincoli,4a, 00184 Roma
 サン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会は→https://www.ivc-net.co.jp/guide/rome/vincoli.html

4.旅の情報:トラステヴェレの夏の風物詩の屋台村

 トラステヴェレとは、「テヴェレ川の向こう側」という意味です。モニュメントや遺跡群が点在するテヴェレ川右岸から渡ると、そこはローマの普段の姿が見られる下町エリア「トラステヴェレ」です。石畳の道が迷路のように続く下町トラステヴェレは、気さくなローマらしさを感じることができるエリアです。別名、“ ローマっ子の心のふるさと”です。かしこまったレストランではなく、気軽に立ち寄れるトラットリアが多いエリアでもあります。
 
 このトラステベレでは夜はライトアップされてお散歩にはお勧めです。6月初めから8月31日迄は、テベレ川の川沿いにいろいろ屋台が並んで、食べ物(パブやトラットリアの類)、雑貨、映画、展示、イベントが開催されています。入場は無料で、飲み食いにお金を使います。使わずにそぞろ歩きをしてもかまいません。軽音楽のコンサートも開催されますのでご確認ください。

5.あとがき

 フォロとはローマの公共広場のことです。カエサルのフォロは165m×75mあり、両側に騎士階級のオフィスがあり、国立図書館、学校が設置されていました。中央にはカエサルの騎馬像が置かれていたとのことです。このカエサルのフォロを使ってカエサルのフォロを再現するイベントが6月から開かれています。次回はカエサルのフォロとイベント「フォロへの旅」です。
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