メールマガジン"ローマから吹く風"第23号:ローマのピッツァ/元祖ポピュリスト・カエサル

 
目 次
1.はじめに アンジェリーノのフランコ
2.ローマの切り売りピッツァ
3.ローマのお薦めの切り売りピッツァ店:Pizzeria Florida
4.カエサルの逸話 元祖ポピュリスト・カエサル
5.古くて新しい食べ物ピンサ
6.あとがき

1.はじめに アンジェリーノのフランコ

 イタリアでピッツァは夜の食べ物です。昼間にピッツァを出す店は、観光客相手の店ばかりでおいしくありません。ところがコロッセオの近くに一軒、日本風イタリアの求めに応じてくれる店があるんです。Angelino "ai Fori"といいます。観光のお客さまを案内するのに場所や時間の都合が良く、そして味もいけることから、現地スタッフがよく利用しています。

  ここに愛想が良くていつもニコニコしている名物給仕のフランコがいます。イタリアではチップを出すのが当たり前なのですが、習慣のない日本のお客様はあまり気付きません。それでもフランコは気持ちよくニコニコ変わらないサービスをしてくれます。ガイドのヤマネさんはいつも心の中でフランコに感謝しています。「フランコ、ありがとう!」



2.ローマの切り売りピッツァ

 イタリアのローマより北の地域では、庶民の手軽な昼食や軽食として切り売りピッツァがあります。ワンコインランチのないイタリアでは重宝しています。基本は立ったままで食べること。近くの公園のベンチに座って食べる人もいます

 これは一種のファーストフードと言えるものです。しかも今から600年前からナポリでは街角の立ち売りピッツァがあり、庶民に親しまれていたとのことです。切り売りピッツァはこの伝統の系譜をつなぐピッツァだとも言えるのです。

 ローマより北の地方で良く見られるのが切り売りピッツァです。四角い長方形なのでピッツァ・アル・タッリョ(Pizza al taglio)と呼びます。小さな店舗(ミスタードーナッツのような感じ)でショーケース様のものに鉄板に乗った様々なトッピングのピッツァが並んでいます。それを好きな大きさに切ってもらいます。少し空間に余裕がある店は店内にカウンター状、あるいは店の外に小さなテーブルを出していて、勝手に持って行って食べることができます。ファーストフードみたいなニュアンスです。イタリアでマクドナルドが進出するのにすごく時間がかかったのはこの切り売りピザがあったからとも言われています。

 飲み物(水、ビール、コカコーラの類)も売っています。中にはピッツァだけでなく、コロッケ、スプリ(トマト味のご飯を丸め中にモッツァレラチーズを入れてパン粉を着けて揚げたもの)、チキンロースト、煮やさい、最近流行りのアラブ料理のケバブを扱っているところもあります。そもそも、ピッツェリアは1800年に出来たのですが、その600年前から街角で立ち売りピッツァがありました。この立ち売りピッツァの系譜をつなぐのが切り売りピッツァだとも言えるのです。

3.ローマのお薦めの切り売りピッツァ店:Pizzeria Florida

 ローマで評判の切り売りピッツァ店が紀元前の神殿跡にあります。Pizzeria Floridaと言います。ローマのコーディネータの山根さんによると、一切れづつ買って、真ん前の紀元前の神殿跡遺跡+シーザーが殺された場所である遺跡Torre Argentinaの脇のベンチに座って食べると、すごく気分が良いそうです。ローマを訪れたら、是非試してみてください。

Pizzeria FloridaのDATA
住所:Via Florida, 25, 00186 Roma
電話:06-68803236
営業時間:9:00-22:00

4.カエサルの逸話 元祖ポピュリスト・カエサル

 アメリカではトランプさんが大統領になりました。トランプさんは典型的なポピュリストとも言われています。大衆の支持のもとに既存の体制と対決することをポピュリズムと呼びます。カエサルが属した党派は民衆派と呼ばれ、それが転じてポピュリストと呼ばれるようになっています。
 ローマの多くの官職は、ローマ市民の選挙によって選ばれています。カエサルは、ローマ市民の間で、元老院派が権益を享受していることに対して不満があり、粛清された執政官のマリウスの時代を懐かしむ気配があることを嗅ぎ分け、ローマ市民の支持を集めます。この手法は、一般大衆の利益や権利、願望を考慮して、既存の体制と対決します。カエサルは、ローマ市民の支持を背景に、地位の向上を達成しました。

 カエサルの凱旋式では、戦った兵士達に報奨金を与えました。その額は、兵士であれば実に年間給料の35年分にもあたる途方もないものでした。さらに当時の常識に反して、戦死者の遺族にも報奨金が与えられました。また、見物に来た市民全員(成人男性)に、一人あたり87.5リットルの小麦と、3.27kgのオリーブ油等のお土産が出されたと言います。凱旋式の招宴には6万人が招待されました。凱旋式の合間には、演劇を提供したり、競技場に水を引き込んで模擬海戦を見せたり、400頭のライオン狩りが行われました。元祖・ポピュリストの面目躍如です。

 ちゃきちゃきのローマっ子はいまだにカエサルの遺言でローマ市民全員に遺産わけをしてくれたことを感謝しているということです。そして3月15日(暗殺の日)を忘れないそうです。それだけローマの人々はカエサルに心服しているのですね。カエサルはイタリアの英雄中の英雄なのです。トランプさんもカエサルにならって、財産を提供したらと思うと楽しくなります。

5.古くて新しい食べ物ピンサ


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 見た目、おなじみのピッツァによく似たピンサ。実は、古代ローマ起源の食べ物なのだ。オリジナルの名前は圧迫するという意味のラテン語「pinsere」。元々はキビ、大麦、オート麦の粉でつくり、楕円形に伸ばしたものを熱した石版の上で焼いて、神々に捧げた食べ物だった。このピッツァの原型を2002年から現代によみがえらせたのはコッラード・ディ・マルコ氏。ピンサ用の粉の販売もしている。現在のピンサは小麦、米、大豆の粉で作り、酵母を入れて70時間自然発酵させて作る。この自然発酵のおかげで重くない、消化しやすい「ピッツァ」が出来上がる。トッピングは通常のピッツァと同じ。この店独特のトッピングもある。

 写真は、給仕さんお薦めの3点。奥の白いピンサはトスカーナ産の豚の脂肪分だけのベーコン「ラルド・ディ・コロナータ」と南イタリア・トロペアの赤い玉ねぎのトッピング。左の赤いピンサはトマトと水牛のモッツァレッラ。右のピンサは豚の腸詰めとポルチーノきのこ。どれも美味しかった。給仕さんが普通のピッツァより小さいよ、というので、一人一枚の割で注文したら十分大きくて食べきれなかった。隣のテーブルでピッツァを頼んだ人がいて、その大きさを見て給仕さんの言葉に納得。直径30センチはある大きなピッツァだった!余ったピンサはお持ち帰りにしてもらいました。ローマに来たらぜひ試して欲しい逸品です。

6.あとがき


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 ルネサンス発祥の地として知られているフィレンツェは、職人の街としても知られています。ルネサンスを支えた織物や宝飾品の生産が、トスカーナの職人の起源と言われています。それが発展していまやフィレンツェは、世界的な高級ブランドの生産地として名を馳せています。次回はビ・スポークの街、フィレンツェの街を紹介します。

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