Cucina Italiana

クチーナ・イタリアーナ(イタリアの台所)
第56号

カルチョーフィの下処理とカルチョーフィのピンツィモニオのレシピ

はじめに



スーパーで買ったカルチョーフィ
花束のようにゴムでまとめて売られています
生け花のようにして空き瓶に水を入れてさしておくと長持ちします

 今回はイタリア語でカルチョーフィと呼ばれる野菜についてご紹介します。別名アーティチョーク、または朝鮮アザミとして知られるカルチョーフィは、ざっと挙げただけでも、オリーブオイル漬けにする、詰め物をしてオーブンで焼く、カルパッチョ風に薄くスライスして前菜にする、天ぷらの要領で揚げる、カルチョーフィのリゾットやパスタソースとしてペンネと和えたり、 煮て肉料理の付け合わせにする等、様々な調理法に向く使い勝手のよい野菜です。
 夏場はすっかり売り場から消えますが、毎年10月頃から売り出されて最盛期には、花束のようにゴムでまとめて山積みにされたカルチョーフィが安価で売られるようになります。
 
 トスカーナ地方は上質のエクストラバージンオリーブオイルの産地として知られています。晩秋になるとオリーブ農園ではたわわに実った緑色のオリーブの実を摘み取る作業が始まります。
 搾りたてのエクストラバージンオリーブオイルの風味を楽しむための名脇役として、カルチョーフィはなくてはならない野菜です。 今回ご紹介するレシピは、カルチョーフィのピンツィモニオです。ピンツィモニオとは、 オリーブオイルに塩コショウ、バルサミコ酢などを入れたものに、野菜やパンをディップし て食べる料理です。トスカーナ料理の中には、素早くできて、素材の味を最大限に引き出すシンプルな料理も少なくありません。あらゆるものをそぎ落とし、厳選した究極の食材同士のみを組み合わせた料理は、時に私達の味覚を研ぎ澄まします。
 
 カルチョーフィのピンツィモニオというレシピは、ぴりっとした辛みが舌に残るトスカーナ産の搾りたてのエクストラバージンオリーブオイルを味わうための相性抜群の野菜として筆頭に挙げることができます。
 カルチョーフィのピンツィモニオをエクストラバージンオリーブオイルと共に食す為に、トスカーナ地方では伝統的にチョトラと呼ばれるレンガ色のテラコッタ製の小さな器を用います。トスカーナの家庭の食器棚には、たいてい小さなピンツィモニオ用の器が人数分用意されています。
 
協力者の紹介と刊行スケジュール
http://www.ivc-net.co.jp/food/mailmaga/2016/publish.html

 


ピンツィモニオに欠かせないテラコッタ製の器(右)と
絵付されたピンツィモニオ用の陶器(左)

カルチョーフィのピンツィモニオのレシピ



カルチョーフィのピンツィモニオ セッティング例

1.カルチョーフィは長い茎が付いた状態で売っているので、ナイフで適度な長さに切ります。
 
2.茎に付いている小さい葉や、紫色の外側の固い花弁を数枚むしり取ります。すると、中央から上が紫色で下がクリーム色の食用部分となる花弁が出てきますのでそこでむしるのをやめます。
 
3.食用部分となるカルチョーフィの花弁を洗います。水道の蛇口から熱めのお湯を出して、固く閉じたカルチョーフィの真上から注ぐと、花弁が開いてくるので、水流を利用して花弁の中まで全体をよく洗います。
 
4.洗い終わったらカルチョーフィの茎を持って振り、水気を取ります。花弁を元通りに閉じて形を整えます。洗ったカルチョーフィを人数分まとめてお皿や陶器のボールに盛り、そのまま食卓に運びます。
 
5.テラコッタ製のピンツィモニオ用の小さな器に搾りたての旬のエクストラバージンオリーブオイルを半分ほど注ぎます。塩を小さじ1/2入くら入れたものを人数分用意します。(この時点ではオリーブオイルと塩をかき混ぜまぜん。)肉用のぎざぎざの歯の付いた小さめのナイフも人数分用意しておきます。

 


蛇口から勢いよくお湯を注ぐとカルチョーフィの堅い花弁が自然に開いてきます

 用意はここまでです。食べられない部分は長い茎の堅い部分や紫色の外側の堅い花弁で、廃棄部分は結構な量になります。カルチョーフィは灰汁が強い野菜なので、白いプラスチックの容器に切り口が直接触れたままの状態ですと容器が薄茶色に着色してしまうので、ステンレス製の容器や陶器を使う事をお奨めします。
 
 カルチョーフィを食べやすい大きさに切って衣を付けて揚げものにする場合も、切り口がすぐに茶色く変色してしまうので、水を張ったボールにレモン汁を搾った物を予め用意しておき、切ったカルチョーフィを入れて灰汁抜きをする下準備が必要です。
 
 トスカーナ地方のレストランでカルチョーフィのピンツィモニオを頼むと、食用部分まで剥いて下処理をした状態でテーブルに運ばれてきます。
 それでは、どのようにナイフを使ってカルチョーフィを解体しながら食べていくのか、カルチョーフィのピンツィモニオの食べ方についてご伝授します。

 


左から、店で売っている状態のカルチョーフィ
ピンツィモニオ用に下処理をしたカルチョーフィ
食べ進むにつれてクリーム色の柔らかい食用部分が増えていくカルチョーフィ
羽根の生えたカルチョーフィ

カルチョーフィのピンツィモニオの食べ方

 カルチョーフィの花弁を一枚ずつ剥がして、紫色の上の部分を持ち、クリーム色の下の食用部分をエクストラバージンオリーブに浸しながら食べます。
 この時、チョトラの容器の底にたまった塩とエクストラバージンオリーブオイルを花弁を使って軽くかき混ぜながら好みの塩加減で食べていきます。塩は全て溶けきらず、食べ終える頃に容器の底に塩が若干残っているくらいの状態です。
 
 カルチョーフィを剥がしながら中心の花弁へと食べ進んでいくにつれて、柔らかいクリーム色の食用部分がより増えてきます。はじめから勢いよくかぶりつくと、繊維がある堅い部分も口に含んでしまうことがあるので、クリーム色の部分を見極めてからかぶりつきましょう。
 
 花弁を最後まで食べきると、白いふわふわとした羽根の生えた花芯が出てきます。ここが一番歯ごたえが良く美味しい部分です。茎の外側の皮をナイフで剥き、花芯を十字に割ってエクストラバージンオリーブオイルに浸して食べます。
 これで最後までエクストラバージンオリーブオイルを味わいながら綺麗にピンツィモニオを食べきることができました。

 


カルチョーフィの花芯の拡大写真

 食べている最中にも、食用部分ではない紫色の堅い花弁の廃棄部分が出ますのでまとめて陶器の皿などに入れておきます。
 カルチョーフィの切り口からは茶色い汁がじわじわと出てきて布製のナプキンや白いプラスチックも染めてしまいますので、長時間切り口が触れないように注意しましょう。

 

エピローグ〜生のカルチョーフィを食べた後の口中


 生のカルチョーフィをピンツィモニオにして食べた後、鏡の前で口を大きく開けて舌を出してみましょう。カルチョーフィを生食すると、ところどころ歯はお歯黒のように染まり、舌も黒っぽくなっていて口中はおどろおどろしい様相となります。しばらくの間はえごい感じが残るかもしれません。
 歯磨きをすれば付着した黒っぽい部分は落とせますので心配は御無用です。しかし、もし食事の後に誰かに会う約束があったり、大切な人との気合を入れた食事であれば、カルチョーフィのピンツィモニオを食べるのは避けた方が無難かもしれません。
 
 イタリア人のソムリエによるイタリアワインの講義を受けた時に、赤ワインと相性の悪い食べ物として生のカルチョーフィがリストに挙げられていたことを思い出します。赤ワインのタンニンと生のカルチョーフィの鉄分が結びつくと、せっかくの赤ワインもえぐみと渋みを感じてしまうからだそうです。
 トスカーナの人たちはカルチョーフィが出回る季節には、口中をお歯黒状態にしながらもどこ吹く風とカルチョーフィをエクストラバージンオリーブオイルに浸しながら生でバリバリと食し、自然の恵みを享受するのでありました。


カルチョーフィのピンツィモニオの最後の一口

 フィレンツェの自宅での料理レッスンでは、カルチョーフィが出回る季節(10月〜3月頃)にはお客様のご要望に応じてカルチョーフィづくしの料理をレッスンに組み込むこともできます。
 個人旅行や卒業旅行、団体旅行のフリータイムなどを利用して等、フィレンツェを訪れる機会があれば、ぜひ旅の思い出に料理レッスンにご参加ください。
 
中島洋子の料理レッスンは

→http://www.ivc-net.co.jp/food/toscana/lesson.html
 

中島洋子さんのイタリア食紀行

→www.ivc-net.co.jp/food/toscana/foodlogue.html

 

次回予告


 やはり日本人の口には、肉料理より魚料理が口に合います。イタリアでは肉料理より値段が高い高級料理とされるシーフード。食文化の違いなのか、日本人を納得させる魚料理は意外と少ないです。このようなイタリアでどうしたら美味しい魚料理が食べられるか報告させていただきます。
 
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